こんにちは。
ほぐリッチです。
施術後に起こる「痛み」や「だるさ」を、まとめて“揉み返し”と捉える人は少なくありません。
しかし、実際には 筋損傷による炎症性の痛み(揉み返し) と、
血流改善・自律神経調整による一時的変化(好転反応) は、まったく異なるメカニズムで発生します。
本稿では、施術者がクライアントへ正確に説明できるよう、解剖学・生理学の観点から両者を明確に区別しながら解説します。
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■ 揉み返しとは:筋線維レベルの炎症反応
揉み返し(Delayed Onset Muscle Sorenessに類似)は、過剰な機械的ストレス により筋線維や筋膜などの軟部組織に微小損傷が生じ、それに伴う炎症反応が発生することで起こります。
生理学的プロセス
1. 過度の圧や方向性の誤った力が筋線維を押しつぶす
2. 筋膜・筋線維に微細損傷(microtrauma)が発生
3. 損傷部位に炎症性サイトカインが放出
4. 血管拡張・発熱・疼痛受容器の感受性が上昇
5. 触ると痛い(圧痛)、動かすと痛い(伸張痛)が出現
揉み返しは、身体が「守るため」に起こす炎症であり、施術者の刺激量が過剰だったことを示す指標でもあります。
揉み返しの典型症状
• 触れるとズキッと痛む圧痛
• 局所的な熱感、場合によっては赤み
• 強い筋肉痛のような痛み
• 2〜4日ほど痛みが持続する
• 痛みの場所が“ピンポイント”である
揉み返しが起こる技術的原因
• 圧を点で入れてしまう
• 皮膚・脂肪の遊びを取らず、そのまま深部へ押し込む
• 筋繊維の走行に逆らう刺激
• 速い・鋭い刺激を繰り返す
• セラピストの体重を“落とす”押し方
※筋組織の粘弾性・繊維方向・滑走構造を理解していない施術ほどリスクが高い。
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■ 好転反応とは:自律神経・循環系の生理的変化
好転反応は、筋損傷による炎症ではなく、施術によって身体の環境が大きく変わることで起こる 一過性の生理的反応 です。
生理的プロセス
1. 筋ポンプ作用が改善し、局所血流量が増加
2. 滞っていた代謝産物・老廃物が一時的に血中へ流れ込む
3. 副交感神経優位へ移行し、体がリカバリーモードへ
4. 恒常性維持(ホメオスタシス)の再調整が起こる
5. 一時的な「だるさ」「眠気」「重さ」を感じる
これは体が「整っていく途中」で起こる正常な変化であり、数時間〜48時間で自然に消失します。
好転反応の典型症状
• 強い眠気
• だるさ、脱力感
• ぼんやりとした重さ
• 体が温かくなる
• 全身性の感覚変化(ローカルではない)
※“痛み”というより“倦怠感”が中心で、施術後に睡眠が深くなる人も多い。
判別のコツ
“押されると痛いか” が最も大きな分岐点です。
・押すと痛い → 炎症(揉み返し)
・押しても痛くない、ただ重い → 生理的変化(好転反応)
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■ なぜ一部の施術では揉み返しが起こりやすいのか
筋肉・筋膜には 粘弾性(viscoelasticity) があり、
強すぎる圧や速すぎる圧は、その粘弾性を超えて組織を損傷させます。
さらに、
• 局所的な点圧
• 組織の滑走を無視した押し込み
• 圧を抜く速度が速い
• 方向性と施術速度が不一致
これらはすべて「不自然な力」として組織に伝わり、炎症を誘発しやすくなります。
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■ ほぐリッチ式ではなぜ揉み返しを最小限にできるのか
ほぐリッチが大切にしているのは、
“深く効くのに組織を傷つけない” という圧のコントロール技術です。
ほぐリッチの原則
• 皮膚・脂肪の遊びを取る(これで点圧を防ぐ)
• 組織に圧が届いたら“溜める”(押し込まない)
• 圧の抜きはゆっくり(急激な負荷変化を防ぐ)
• 筋繊維の走行に沿ってアプローチ
• 圧の主体は体重ではなく重心コントロール
これらはすべて、筋損傷を起こさず深部へアプローチするための必須条件です。
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■ まとめ:両者を正しく理解することは施術者の信頼に直結する
揉み返しは筋の炎症であり、避けるべき施術ミスです。
一方、好転反応は身体が回復過程に入った際に起こる自然な反応で、問題ありません。
施術者がこの違いを正確に説明できることは、
クライアントの不安を取り除き、施術の信頼性を高めるうえで極めて重要です。
「何が起きているのか」「なぜその反応が出るのか」を
解剖学・生理学に基づいて説明できるセラピストは、選ばれ続けます